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読んだ本 #3 糖尿なのに脂質(あぶら)が主因 糖質(でんぷん:穀物・いも類)よりも数種の植物油脂が危険因子 [読書]

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この説は日本で1965-75年に消費が急増した、食用の植物油脂に糖尿病の原因を求めると、いろいろな事象を合理的に説明できるとするものです。

 

生活習慣病の多くが長期の弱い炎症によってもたらされている、という説はほぼ定説として認められていると思います。この炎症を引き起こす原因を、高血糖やその累積の結果としてのAGE'sに求めると、その対策は糖質制限になります。


糖尿なのだから糖でしょという単純な紐付けは受け入れやすいと思います、しかしこの説では別の要素を考慮すべきとしています。先に紹介した糖尿なのにあぶらが主因pdf-5ぺージの、”エネルギー制限と運動量増加”の項目をご覧ください、「糖化ヘモグロビン(HbA1C)の値を各種の方法で低く保っても、糖尿病の合併症は抑えられていません。このことは高血糖によるタンパクの糖化(AGE's)が、動脈硬化や糖尿病の主因にはなっていないことを示しています。」と、安直な紐付けで見落とされている部分を指摘しています。


食用の油脂の中で摂りすぎると炎症を起こす体質に移行させる種類があるのですが、この国の保健栄養指導においては、油脂を単なるエネルギー源として扱い、炎症の原因となる種類を含む植物油が推奨されがちな状態です。


生活習慣病は症状が出るまで数年あるいはそれ以上の累積があります、この数十年間糖質の摂取量は減少し続けています。糖尿病患者の急増に先立って油脂の摂取量は急増しています。とりわけなぜ植物油が大量に生産消費されるようになったのでしょう。その背景を以下のように本書は解説します。


(以下本書P28のコラム「余らせては困ります!年内に食べきってください!」より)
「1960年ころから酪農・養鶏業が盛んになり、栄養価の高い菜種・大豆・とうもろこしなどが選ばれましたが、これらを細粉して家畜に与えると油が多すぎて、消化の問題が出てきます。そこで脱脂し脱脂粕を家畜に与え、油分を食用油として人に与えるようになりました。「高リノール酸植物油は健康によい」、というエセ情報とともに、1965年から1975年にかけて食用油の消費が急激に増えました。
その後、日本の政府開発援助として東南アジアにパームヤシ畑をつくり、工業製品を買ってもらう代わりにこれを大量安価に輸入し、精製して食用に使い始めたのです。
つまり酪農・養鶏業界と食品油脂業界は深くかかわっており、食用油が売れ残ると困るのです。産業界-行政が御用学者を動員して、植物油脂の危険性について言葉を濁し、「植物油の摂りすぎが健康に悪い」という論文を無視して油の消費を拡大しているようにみえるのは、このような背景と無関係ではないでしょう。」


次に食生活の変化を「その病気、その疲労隠れ油が原因です 林裕之著 三笠書房 知的生き方文庫」を参考にまとめてみました。


1961年に大豆が1971年に菜種の輸入自由化が行われています、これらからとれる油をブレンドして安価なサラダ油が作られ、それまでに無い食習慣が始まります。焼く煮る蒸すは炒める揚げるに、てんぷら・カツレツ・炒め物・ステーキ・野菜サラダのドレッシング、安価な植物油を大量に摂取するようになります。


急激に普及した加工食品の植物油の成分割合は、マヨネーズ7割、インスタントラーメン15~20%、フライドポテト15%、ポテトチップス35%、その他、菓子パン、ケーキ、ラクトアイス、スナックフード揚げ菓子類、揚げ物惣菜・・・。


手軽さ、安さ、美味しさに加えマイルドドラッグと呼ばれる依存性的性質も併せて、日本人の食に深く大きく浸透しています。


多くの加工食品ではバターやラードが使われていた部分は、ヤシ油やマーガリンに置きかわっています。例えばパンはバターを加えるもののはずでしたが、汎用品の成分表に植物性油脂や飽和脂肪酸ではなく、バターや動物性油脂と書いてあるものがどれほどあるでしょうか。


アンセル・キーズという疫学者が「7か国調査」を顕し、1961年アメリカの雑誌TIMEで報じられ、センセーションを巻き起こします。この調査の心臓疾患と脂肪摂取量の国ごとの相関には説得力があり(実は実際に調査をしたのは22か国で、それらの国々での相関ははっきりしたものではなかった)、そこで示された食物中の脂肪の量は心臓発作のリスクに比例するとの結論は、マスコミ医学会世論に大きな影響を与え、飽和脂肪酸(動物性脂肪)の抑制が必要との大きな流れになってゆきます。アメリカではその後80~90年代何故か”総脂肪”摂取量の低減が国是となり、
低脂肪無脂肪の食品が好まれ糖質炭水化物の摂取量が増加します。


ここが日本と少し違うようで日本では動物性脂肪は体に悪く、植物性の油脂は悪いものではない、もしくは良いものとの認識が一般的だったと思います。糖質制限はアメリカ発のダイエットですが、糖質の摂取比率が上がったアメリカと下がった日本では事情が違うようにみえます。


日本アメリカの共通項は、安価で効率的に食肉、卵、乳を生産するための飼料の残りかすの油に、いかに付加価値を付けるかという戦略の結果としての、植物性油脂が人の口に入る量の増加(日本においては1965~1975年)です。


本稿では栄養成分の摂取量の時系列の変化などは、本書の示すところに従っております。




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糖尿なのに脂質(あぶら)が主因 「糖尿病とその合併症予防の脂質栄養ガイドライン」 日本脂質栄養学会 糖尿病・生活習慣病予防委員会/著


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