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読んだ本 薬剤師の本音 65歳を過ぎたら飲んではいけない薬 宇田川久美子著 宝島社 2019/03 [読書]

愚かしくも哀れ、あさましき薬漬け老人の末路、


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となっては困りもの、脱出への道筋。


1割負担をいいことに、「これまで払った保険料の元を取らなければ損」と、「多剤服用」をありがたくいただき、結果健康寿命を縮めてゆく高齢者。そこに経済機会を見出すクールな人々、その実態を垣間見ることができます。

高齢者の医者依存、薬依存に警鐘を鳴らし、「高齢者の服薬は1錠でもリスクが高い」と、タブーに切り込む高齢者救済の書。



本書裏表紙のそでで、著者を以下のように紹介しています。

「薬剤師として総合病院に勤務。患者に投薬を続けるなかで「薬で病気は治らない」現実に目覚め、病院を退職。自らも薬をやめ、不調だった体が健康になる。この経験から、「薬を使わない薬剤師」として医者依存、薬依存から脱却し、健康に生きる方法を啓もうする活動を続けている。」

また、表のそでには、「薬で病気が治るはずなら、あなたの飲む薬の量が減らないのはおかしくありませんか?」と記されています。

本書では「薬はよくない」「薬を飲んではいけない」、との主張をしているわけではない、と著者は再三述べています。

 

以下備忘録として主要な部分を加筆抜粋、太字は引用者による。

 

生活習慣病などの薬は、病気を根本的に治すものではなく、あくまで症状を抑えるためのもの

患者さんの多くは、「病気を治したい」と思って薬を飲んでいる。

薬を飲んで、一時的に症状が無くなると、それで良しとしてしまう人があまりにも多い。

病気の根本的な原因を考えずに、「薬があるから大丈夫」という意識になる。

「どんな病気も病院でもらった薬で治すもの」という間違った固定観念を捨て去ることが、まず必要。

厚生労働省の生活習慣病対策のスローガンは「1に運動 2に食事 しっかり禁煙 最後に薬」。

 

加齢により、代謝機能や排泄機能は衰え薬物が体内に残りやすい、高齢者の服薬は、1錠でもリスクが高い

75歳以上の約25パーセントが7種類以上、40パーセントが5種類以上の薬を処方されている。

多剤服用の大きな問題点は、薬の飲み合わせによって予期できない化学反応が起きてしまい、重篤な副作用が起きるリスク

「薬剤起因性老年症候群」:多種類の薬を飲んでいるなかで、生活に支障が出たり、新たな症状が現れたりする場合には、まず薬を疑ってみてください。

 

患者が薬を欲しがるから医師も出しているという側面。病院に行ったのに何も薬が出ないと、「とんでもない先生だ」と思う患者さんが多いと実感。

高齢者の中には、「ずっと保険料を払ってきているので、健康保険制度をしっかり使って元を取らないと損!」という発想の人も。医療費が1割負担の75歳以上では、「できるだけしっかり病院に通って、薬をたくさんもらおう」考えている人も少なくない印象。健康面からも保険財政の面からも、これ以上、愚かなことはありません

 

薬の負のスパイラル。薬が手放せなくなり、耐性が出来てしまうと、薬の量は増えていきます。それでも効果が出ないと、さらに新しい薬が加わります。そして副作用が出れば、それを抑えるためにさらに薬が処方される。こんな調子では体を壊してしまうのは目に見えています。国民皆保険制度がこの構図を促進しています。

 

「基準値」にとらわれすぎる日本人。「基準値」より高いから、ただちに身体に危険が及ぶというわけではないのです。医学会や医薬業界の思惑もあり、「基準値」それ自体に疑問がある、と私は考えています。たとえばメタボ検診の「130以上が高血圧」という「基準」には、年齢、身長、体重などの個体差が全く考慮されていません。

最近、血圧、コレステロール値、血糖値などの正常範囲が意図的にどんどん狭められています。自覚症状があるなら別ですが、薬の服用には慎重になるべきです。大切なのは、病院の示す基準に惑わされないことです。

 

年を取れば身体に不調が出るのは当たり前。八十代の時の身体が、三十代の時の身体と、生理機能も運動機能も循環機能も同じレベルであるわけがありません。病院に行って心臓の調子が悪いと言えば、ペースメーカーを入れたり、手術をすすめられたり、薬を処方されたりします。なかには本当にそれが必要なのかと首をかしげたくなるようなものもあります。不必要な治療を受けたくなければ、「自分にとっての年相応」を認識し、年を重ねることによる身体の変化をしっかりと受け入れることが大切だと思います。

 

自分の身体は世界でたったひとつのもの。医師に言われるがままにして、後で後悔しても遅い。

 

以上引用終わり

 

以前調剤をやっている薬剤師の人に問いました。「医薬品消費減量の為に医薬分業をやったはずなのに、膨らみ続けるのはなぜですか」「欲しがるからだよ」即答でした。疑問が解けます。

現在の老人医療、処方薬の世界がどのようなことになっているのか。医師薬剤師患者がどのような想いスタンスで処方調剤服用しているのか、仄聞にしてつまびらかに知ることは出来ませんでした。

安全安心は生活者の願いです。安心安楽のためとめどない公費の補助で大量の薬、医療が消費されていく様は、民度の高い先進国の国民が望むものなのか。安心安楽を求めるあまり安全が脅かされているとすれば、こんな愚かなことはありません。

 

本書の目玉は第3章の”注意を要する薬”のリストです、ぜひ手に取ってご確認ください。

 

本書の目次から一部の項目を列記します。

 

1章 薬剤師だけが知っている薬の正体

   病気を治すのは「自然治癒力」

   4剤以上飲まされている患者は「危険な状態」

   常用すると薬は効かなくなる

   「新薬」には要注意

   漢方薬も「無害」とはいえない

   薬剤師と医師の「本当の関係」

   医師は薬の知識をどこから得ているのか

   薬と付き合うための「指針」

   日本では「死」についての議論がタブー

   自分の「最後」をどう迎えるか

第2章 高齢者が知らない”薬漬け”のリスク

   どうして飲む薬の種類が増えるのか?

   5剤以上飲んでいる人は見直しが必要

   薬は「若い時と同じ」感覚ではダメ

   厚労省が「多剤服用」の危険性の言及

   薬の組み合わせは無限大で把握不可能

   相談できる「かかりつけ薬局」を見つける

   「お薬手帳」は必ず一冊にまとめる

   薬剤師とうまくつきあうコツ

   健康番組の情報を真に受けない

   世間の「常識」にとらわれすぎない

   「薬を減らそう」という世界的潮流

   薬が”お土産化”する日本の医療

   多剤服用を避けるための「選薬七か条」

   薬とつきあううえでの「心構え」

   安易に薬に頼るより「本当の原因」と向き合う

第3章 65歳を過ぎたら飲んではいけない薬

   不調の原因は「老化」なのか、「薬」なのか

   厚労省が公表した「高齢者が注意すべき薬」

   私が考える高齢者が特に注意を要する薬

第4章 薬に頼らない生活

   「薬に頼らない生活」をすすめる理由

   「薬を飲んだらどうなるかを」自問自答する

   身体を変えなければ「減薬」は成功しない

   「食事」と「運動」があなたの身体を変える

   疲れたときには「果物」を食べる

   「まるごと」食べれば栄養満点

   今すぐできる「簡単ぬか漬け」レシピ

   元気になるための食べ物の選び方

   「ウオーキング」のすごい効用

   姿勢を整える「簡単エクササイズ」

   効果的なウオーキングのやり方

   還暦を迎えても老眼とは無縁

   ”万病の元”ストレスを回避する

   「アンチエイジング」の不可思議

 

国富すさみて 老残在り

賦税過重にして 子育てかなわず

時に感じて 赤子にも涙をそそぎ

長命を寿ぎ 喜びにも心を騒めかす

 

昔読んだ小説の一節に、とても後味の悪い例え話が有りました。

「好きな女にヤクを使わせていうことをきかせる」

 

 

追記

 

子育て世代でもモラルハザードが有るようです。

兵庫県三田(さんだ)市が小児医療費助成の縮小に向けて取り組み、有料化にした結果、昨年7月から12月を前年同月期で比べたところ、助成金は1億8916万円減りました。率直に言って結果は、モラルハザードが減ったと思います。

としています。下は元記事リンク。

「無料」って言葉に騙されないで!それ税金で払っているだけだから。

 

下の記事では、「低いコスト意識、過剰医療」の現状を問題視する意見と、自治体側の「子育て世帯争奪戦の有用な飛び道具としての重要性」を、強調する意見が載っています。

子ども医療費の無料化拡大、是か非か?

 

下の記事では。「医療者側としても、収益にならない細かな生活指導を、なかなか理解してくれない患者に時間をかけて行うより、治らない薬を処方した方が早くて儲かるという現実もある。現代社会の医者、患者、製薬会社の三つどもえの共犯関係は根深い。」として、業界側の利益相反、受療側の無知怠惰依存などのタブーをつまびらかにしています。

”治らない薬”が一番いい!?医師が明かす製薬業界「不都合な真実」

 

タダとかタダに近いというサービスが提示されると、節操を無くしてしまう人がそれなりに居るということでしょう。日本人の民度はその程度のものなのですね。やはり医療栄えて国滅ぶ、有難くも恐るべき国民皆保険制度となってしまっているようです。

 

下の記事はさらに辛辣、断薬の勧め。

患者さんを飼い殺しにする「究極のシステム」です。

 

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薬剤師の本音 宇田川久美子著 宝島社

 

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関連リンク

ワセダクロニクル「シリーズ製薬マネー

 

 宇多川久美子オフィシャルサイト


コメント(1) 
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コメント 1

藤原

身につまされることです。一度、診療すると多数の薬物処方されます。
子供のころは、寝れば治るとか怪我しても赤チン塗っておけば゛、
治るなど言われたものです。人間本来持っている。治癒力が落ちて来て、薬ずけにしても、根本的な生活習慣、食生活直さないと治りませんね。運動もしたいけど障害があるので難しいようです。
現在、医師、薬剤師の良識ある方々が啓蒙活動されています。是非今後とも啓蒙活動お願いします。
by 藤原 (2019-07-21 18:48) 

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