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読んだ本 知ってはいけない薬のカラクリ 谷本哲也著 小学館新書  2019年04月 [読書]


ついに出ました。手間ひまかけたデータを基に、お金がらみの医療の闇を現場からタブーに挑みます。


薬のカラクリ.jpg

 


皆保険制度の破綻予測表出する昨今、資本主義のどう猛で苛烈なグローバル市場において、生き残りをかけ売り上げを競う製薬会社、更には国内市場こそ唯一の生存領域とシェアを死守すべく猛烈に営業をしかける製薬会社。そして聖域に守られた白い巨塔との、医薬品日本国内市場約10兆円をめぐ金脈。この実弾飛び交う御帳場を白日の下に晒し、利益相反を個人名レベルであぶり出す、マネーデータベース「製薬と医師」プロジェクトの活用・紹介のお話です。深く静かに活動してきた医薬品村界隈、青天の霹靂、巨大な市場です、ブロックバスターとなるのでしょうか。


 

以下本書”はじめに”を中心に紹介します。

「探査ジャーナリズム活動を行うグループ『ワセダクロニクル(渡邊周編集長)』と、『医療ガバナンス研究所(上昌広理事長)』に関係する私たち医師のグループにより、製薬会社から医者個人へ流れるお金を調査報道によって明らかにし、日本で初めて2019年1月にインターネット上に公開されたマネーデータベース「製薬と医師」プロジェクト。ここから分かった知見を紹介するとともに、医者が処方薬を選ぶまでの裏側を解りやすく解説していきます。」

「日本は国民皆保険であり、高額の薬も、もとをたどれば皆さんの税金や保険料で賄われています。それが製薬会社の宣伝広告費として医者に流れ、医者は高額な薬を患者に処方し、製薬会社が高い利潤を上げる---この仕組みに患者や納税者であるみなさんが無関心でよいはずはありません。」


「公的なお金の使い道を決めるという点では、医者の立場は政治家や官僚と同じです。国民皆保険のもと、薬など医療に関するお金の多くは、国民の税金や保険料から出ているからです。ところが、これまで医療は聖域と考えられ、医者と製薬会社の関係は全くの野放しでした。---医療の世界には、世の中に知られては困る”不都合な真実”がまだまだたくさん眠っているのです。」


”おわりに”では。


「いくら高給取りの医者とはいえ、製薬会社からの年間の副業収入が数十万円、多い人では数百万円、数千万円ともなると、診療内容に何らかの影響が出ても不思議ではありません。というのは、一度お金をもらってしまうと、人間の性質として、それを失うような意思決定はそもそも行いにくいのです。---しかし、社会全体としては、薬の使いすぎ、過剰処方に対する何らかの抑止力が必要です。」


本文文尾では


「私たちのグループで英語論文をいくつも準備中ですが、学術的に多種多様な分析が必要とされています。公開情報で誰でも自由に研究利用することが可能なので、多くの医者や研究者の方に、データベースを用いた研究に取り組んでいただくことも期待しています。」


目次から抜粋


1章 医者は食事接待で処方箋を決める

    製薬会社は「高級弁当」付き説明会を開く

    衝撃論文「食事接待が処方を決める」

    次々と超高額薬が登場する理由

    薬の値段は適当に決められる

    製薬マネーは薬価の算定委員にも渡る


2章 大学教授は製薬会社の”広告塔”である

    医師は大学や学界の権威に弱い

    日本では医者が資金提供の公開に反対している

    最高額で2900万円の副収入

    薬を出す内科医のほうが謝金が多い

    「処方しないぞ」と寄付金要求

    高い薬に医者を誘導

    第三者組織を迂回して資金提供


3章 飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題だ

    クスリとはリスクである

    日本人は世界有数の薬好き

    数字の操作で病気が決まる

    薬害事件はセンセーショナルに


4章 「不都合な真実は」データによって暴かれた

    データ主義で医療が変わる

    患者が医者をデータで選ぶ時代に

    専門医の肩書はあてにならない

    専門医資格は”資格ビジネス”になっている

    鳥取は東京と同じくらい医者が多い

    ブランド病院には要注意

5章 あなたの主治医はいくらもらっている?

    インターネットで気軽に検索できる

    マネーデータベース「製薬会社と医師」の使い方

    なぜメディアは取り上げないのか

    公務員でも受け取っている人がいる


以上引用終了


財政破綻の構図を、老人と医療・薬のジャンルから理解しようと、関連の情報を集めてきましたが、ようやく自分なりの解釈でコアが見えてきました。


太平洋戦争敗戦時の国の負債はGDP(推計)の約2倍といいます、米国という大国を相手に国の存亡をかけた大戦争のための借金です、その規模を越える負債を積み上げ、日本は今何と戦っているのか。無学な私が”見えた”というのもおこがましい事を重々承知の上で。


こちら(この本の著者)の記事の文末、「医療者側としても、収益にならない細かな生活指導を、なかなか理解してくれない患者に時間をかけて行うより、治らない薬を処方した方が早くて儲かるという現実もある。現代社会の医者、患者、製薬会社の三つどもえの共犯関係は根深い。」またこちら(インタビューアー上昌広)の記事の「現状のシステムは、受給者は受けたいだけ医療を受けられ、医療サービス提供者へも出来高払い。全員で保険料・税金と国の財源に群がっている。依存しているのは、国の財布に加え、国債という次世代のお金です。悪質だと思います。」が戦の構図を端的に示していると思います。


高齢者にとって、肉体あるいは精神の痛い辛い苦しいを、少しの費用(公金を自分のために引き出してくれる)で和らげてくれる、更には死への恐怖を遠ざけてくれる医師は、安心安楽をもたらす神にも匹敵する救済者となります。自ら(家族や関係者含む)の努力工夫によるよりも、薬に頼って苦しみから逃れる或いは安堵を得ることができれば、当面それで事足りるのです。アヘン戦争での阿片に親しむ人と一緒にするのは相当に乱暴ですが、症状を抑える(一時的な安堵をもたらす)だけのクスリと人との関係は、基本的にこのパターンとならざるを得ないのでしょうか。国家公認・推奨・手厚い補助金付きという三つどもえの共依存は逃れられない宿痾なのでしょうか。苦しみと死を(公金を使って)差配する医師という生業の、価値倫理基準はどうあるべきなのでしょう。


三つどもえの共依存を良しとする日本の”空気”が、国をして共依存を推進させています。医師を神のごとくあがめ、聖域たらしむ”空気”のバリアーが医療業界を包み込み、あたかも治外法権の租界のごとき様相を呈すに至っています。これらの”空気”が戦の実相と思います。


”空気”に支配される日本のガラパゴスたる所以を知るため、”空気の構造”池田信夫著白水社2013/05を再読しています。KYな自分が最も読めない”空気”とは同調圧力のことだそうです。一部引用します「田は村全体のコモンズで、その収穫は各戸に平等に分配された。田が各戸ごとに分割されるようになってからも、村内で水の配分をめぐって争うことは固く禁じられ、そういう秩序を乱す者は村八分によって排除された。このコモンズとしての水を守るのが、村民の共有する空気としての掟だった。自由になるには村を離れるしかなく、それは商人などとして成功する場合もあったが、ほとんどの場合は餓死を意味した。」


村のコモンズは皆平等にその利用価値を分け与えられなくてはならない、その掟を守らないものは村八分となり餓死することになる。つまり日本人の思考・判断の原理原則は、”所属する小集団に利する掟(空気)に従わないことは死を意味する”、すなわち”個人が小集団内で生き延びるための合理的な選択肢は同調圧力に恭順する”となります。小集団にとっての合理的選択への構成員に対する同調圧力が、国単位等の大きな問題にあっては、合理的な判断ができなくる最大要因としています。

局益あって省益なく省益あって国益なし、と言われるように、村:小集団の利益が最優先される、この日本独特の機構・構造の解析が、”空気の構造”の重要な論点です、機会が在ればまた紹介したいです。


(業界ネタです)音羽将軍家の講談社が得意とするジャンルと思っていましたが、一ツ橋天皇家も参戦の構えです、このタブーに関する出版界の潮目が変わってきたのでしょうか。現代への対抗上ポストもやらざるを得ないということなのか。出版業界を支えてきた団塊の世代も、視力気力の減退から徐々に市場から退出との読みでしょうか。このジャンル、新潮も辛口のジャーナリズムを得意としてきましたが、文春砲は自分には聞こえてきません顧客年齢層が高めのせいでしょうか。サブカル・インディペンデンスの宝島、アンチ既得権だったはずのSBにも期待したいところです。


TV新聞においては、主力の視聴購読者である、高齢者が喜ぶ話題とも思えませんし、広告出稿に影響する話題は避けたいでしょうから、スルー黙殺が大人の選択というか死活にかかわるとして、当然経営側から強力な圧力がかかると思います。かくして、”お年寄りを大切に””命は地球より重い””医師の処方は絶対の無謬”とする空気に流されて、高齢者.お医者様万歳と叫びながら玉砕に向かって突き進んでゆくのでしょうか。先に在った大戦後の焼け野原はご免です。



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