珈琲豆・粉の保存法を、やや科学的に考察する。 [珈琲に関する豆知識]
コーヒー豆は食品スーパーでは干物の棚に入っておりますし、コーヒー専門店でも冷蔵庫に入っている事はあまり見かけません。
コーヒー豆は干物ではなく生鮮食品だと思うのですが。
コーヒー豆は干物ではなく生鮮食品だと思うのですが。
焙煎されたコーヒー豆の劣化保存に関する情報を、自分の記憶を整理するためまとめてみました。
以下コーヒーの科学 旦部幸博 講談社 BLUE BACKS 2016年 より抜粋要約加筆
劣化の要素は3つに大別される、かつて言われた「酸化する」は③のみでむしろ他の2つの要素のほうが影響大。
①ステイリング
焙煎時に生じたクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンは水分子と反応すると容易に加水分解されてクロロゲン酸やキナ酸に戻り、phが低下して酸っぱくなります。
水分が多いときのみに生じる反応ですが進行は早く,ホットプレートで保温しているコーヒー液なら数十分、焙煎豆が吸湿したときにも常温1~2日で違いがわかるくらいに変化します。
クロロゲン酸ラクトンは中煎りの珈琲の苦み成分となっています、ステイリングでクロロゲン酸(珈琲液中では酸味成分)に戻ると苦みが減り酸味が増えることになります。
②香りとガスの損失
焙煎した直後から、コーヒー豆からは炭酸ガスと一緒に香り成分が抜けていきます。揮発性が高い成分程特徴を失って凡庸になりがちです。またガスが抜けた豆はお湯をかけても膨らみにくく、豆の組織が「開きにくく」なるため、成分の抽出効率が悪くなります。水分が少ない条件下ではもっともはやく生じる劣化で、常温なら10~15日で違いがわかるくらいに変化します
③酸敗
油脂分を構成する脂肪酸が空気酸化を受けると不飽和度(分子中の多重結合の割合)の高い脂肪酸になり、それがさらに酸化されると炭素数6~9程度の低級脂肪酸に分解され、油の痛んだ嫌な臭い(酸敗臭、ランシッド)とpHの低下をもたらします。これが酸化による劣化ですが、進行は意外に遅く、違いがわかるくらいに変化するには常温で7~8週間かかると言われています。
補足:粉砕による表面積の増加
豆を粉砕すると香りの飛散や成分酸化も早くなり、豆のままの時よりも5~10倍くらい劣化が早くなる。
以下コーヒー検定教本 全日本コーヒー商工組合連合会 2012年度版 より抜粋要約加筆
①水分
焙煎豆もしくは粉に含まれる水分は最大で3%程度。これは極めて低い相対湿度に相当するため、コーヒーの吸湿性は非常に高い。
劣化速度に対する水分の影響は非常に大きく(約1.5%の水分増加に対して、劣化速度は1.6倍になるという報告もある)できるだけ乾燥した状態を保つことが望ましい。
②酸素
通常空気には20%程度の酸素が含まれており、その作用が劣化の一因となっている、酸素の影響度合いの変化量は低濃度側で非常に大きいという特徴があり、0%から1%の間で劣化速度が10倍変わり、5%以上では大差ないという報告もある。影響を取り除くのであれば、徹底した脱酸素が必要であるが、効果のあるレベルを達成するには脱酸素剤の使用や不活性ガス置換などが不可欠であって、家庭での実施は困難である。
③光
紫外線はコーヒーの色調や風味に影響を与える。長期の保存を考えるのであれば、直射日光や蛍光灯の明かりなどは極力避けることが望ましい。
油脂類の酸化変質の指標の1つとなる過酸化物価(POV)に対する光の影響は大きく、1か月の蛍光灯下で保存した場合、暗所で保存した場合の2倍弱の数値が報告されている。
④温度
水分、酸素の影響と比較して相対的に小さいという指摘もあるが、おおまかに温度が10℃上がると反応速度は2倍になるので高温は避けることが望ましい。
補足:低温保存と密閉度
温度を低下させるに従い相対湿度は上昇し、コーヒー豆の吸着性も高まる。密閉度・ガスバリア性の低い包装の場合、吸湿したり、冷蔵庫内の異臭を吸着したりする危険性がある。
*結論
以上の情報を基に家庭でのコーヒー豆・粉の保存法扱い方を考えます。
吸湿・保存期間・温度・酸素・光・容器の気密度やガスバリア性・粉砕による表面積の増加が主な要素として洗い出されます。
最大の要素は水分増加による加水分解の増進がもたらす、焙煎とは逆方向の化学変化です。
温度も重要です、10℃で2倍ですから、常温20℃から冷凍庫-20℃であれば、2分の1の4乗で16分の1の劣化速度になります。常温の2日が冷凍庫1か月分にあたることになります。
粉砕による表面積の増加に伴う劣化速度の増進を避けるため、抽出直前に豆を挽くことも5~10倍くらいの影響ですから、可能な限り実現したいです。
①豆のままでガスの出入りの無い機密容器を用いる。
②低温・遮光で保存する。
③開閉による吸湿を減らすためできるだけ小分けにし、開ける前に常温に戻す。
④40℃の温度差、豆と粉の表面積による差を合わせると、100倍程の劣化速度の差が生じる事となります。
⑤ガスと香気の放散を抑え、ステイリング・酸化・紫外線を避けた豆を、常温に戻して抽出すると。組織が良く膨らみ抽出効率が良く、鮮度と香りの高い抽出液が得られます。
現実にはこだわりすぎると煩雑ですし、豆の保存スペース、粉砕機の設置スペース、常温に戻す時間経過、等物理的要因で実現できない要素もあると思います。
鮮度の高い豆とガスバリア性の高い包装容器を提供してくれる店を選び、短期間で消費できる量を購入するのが最良となります。
大量の豆を買ったときは、豆のままの状態で1~2週間程度の消費量を、気密容器に小分けして冷凍保存し、消費中の容器は冷蔵庫に保管し、できれば室温に戻してから淹れる直前に粉砕する。
と、書いてはみましたが、自分で自宅においてであればここまでの手間は掛けられないと思います、あくまでも理想としてですから・・・・・
以下コーヒーの科学 旦部幸博 講談社 BLUE BACKS 2016年 より抜粋要約加筆
劣化の要素は3つに大別される、かつて言われた「酸化する」は③のみでむしろ他の2つの要素のほうが影響大。
①ステイリング
焙煎時に生じたクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンは水分子と反応すると容易に加水分解されてクロロゲン酸やキナ酸に戻り、phが低下して酸っぱくなります。
水分が多いときのみに生じる反応ですが進行は早く,ホットプレートで保温しているコーヒー液なら数十分、焙煎豆が吸湿したときにも常温1~2日で違いがわかるくらいに変化します。
クロロゲン酸ラクトンは中煎りの珈琲の苦み成分となっています、ステイリングでクロロゲン酸(珈琲液中では酸味成分)に戻ると苦みが減り酸味が増えることになります。
②香りとガスの損失
焙煎した直後から、コーヒー豆からは炭酸ガスと一緒に香り成分が抜けていきます。揮発性が高い成分程特徴を失って凡庸になりがちです。またガスが抜けた豆はお湯をかけても膨らみにくく、豆の組織が「開きにくく」なるため、成分の抽出効率が悪くなります。水分が少ない条件下ではもっともはやく生じる劣化で、常温なら10~15日で違いがわかるくらいに変化します
③酸敗
油脂分を構成する脂肪酸が空気酸化を受けると不飽和度(分子中の多重結合の割合)の高い脂肪酸になり、それがさらに酸化されると炭素数6~9程度の低級脂肪酸に分解され、油の痛んだ嫌な臭い(酸敗臭、ランシッド)とpHの低下をもたらします。これが酸化による劣化ですが、進行は意外に遅く、違いがわかるくらいに変化するには常温で7~8週間かかると言われています。
補足:粉砕による表面積の増加
豆を粉砕すると香りの飛散や成分酸化も早くなり、豆のままの時よりも5~10倍くらい劣化が早くなる。
以下コーヒー検定教本 全日本コーヒー商工組合連合会 2012年度版 より抜粋要約加筆
①水分
焙煎豆もしくは粉に含まれる水分は最大で3%程度。これは極めて低い相対湿度に相当するため、コーヒーの吸湿性は非常に高い。
劣化速度に対する水分の影響は非常に大きく(約1.5%の水分増加に対して、劣化速度は1.6倍になるという報告もある)できるだけ乾燥した状態を保つことが望ましい。
②酸素
通常空気には20%程度の酸素が含まれており、その作用が劣化の一因となっている、酸素の影響度合いの変化量は低濃度側で非常に大きいという特徴があり、0%から1%の間で劣化速度が10倍変わり、5%以上では大差ないという報告もある。影響を取り除くのであれば、徹底した脱酸素が必要であるが、効果のあるレベルを達成するには脱酸素剤の使用や不活性ガス置換などが不可欠であって、家庭での実施は困難である。
③光
紫外線はコーヒーの色調や風味に影響を与える。長期の保存を考えるのであれば、直射日光や蛍光灯の明かりなどは極力避けることが望ましい。
油脂類の酸化変質の指標の1つとなる過酸化物価(POV)に対する光の影響は大きく、1か月の蛍光灯下で保存した場合、暗所で保存した場合の2倍弱の数値が報告されている。
④温度
水分、酸素の影響と比較して相対的に小さいという指摘もあるが、おおまかに温度が10℃上がると反応速度は2倍になるので高温は避けることが望ましい。
補足:低温保存と密閉度
温度を低下させるに従い相対湿度は上昇し、コーヒー豆の吸着性も高まる。密閉度・ガスバリア性の低い包装の場合、吸湿したり、冷蔵庫内の異臭を吸着したりする危険性がある。
*結論
以上の情報を基に家庭でのコーヒー豆・粉の保存法扱い方を考えます。
吸湿・保存期間・温度・酸素・光・容器の気密度やガスバリア性・粉砕による表面積の増加が主な要素として洗い出されます。
最大の要素は水分増加による加水分解の増進がもたらす、焙煎とは逆方向の化学変化です。
温度も重要です、10℃で2倍ですから、常温20℃から冷凍庫-20℃であれば、2分の1の4乗で16分の1の劣化速度になります。常温の2日が冷凍庫1か月分にあたることになります。
粉砕による表面積の増加に伴う劣化速度の増進を避けるため、抽出直前に豆を挽くことも5~10倍くらいの影響ですから、可能な限り実現したいです。
①豆のままでガスの出入りの無い機密容器を用いる。
②低温・遮光で保存する。
③開閉による吸湿を減らすためできるだけ小分けにし、開ける前に常温に戻す。
④40℃の温度差、豆と粉の表面積による差を合わせると、100倍程の劣化速度の差が生じる事となります。
⑤ガスと香気の放散を抑え、ステイリング・酸化・紫外線を避けた豆を、常温に戻して抽出すると。組織が良く膨らみ抽出効率が良く、鮮度と香りの高い抽出液が得られます。
現実にはこだわりすぎると煩雑ですし、豆の保存スペース、粉砕機の設置スペース、常温に戻す時間経過、等物理的要因で実現できない要素もあると思います。
鮮度の高い豆とガスバリア性の高い包装容器を提供してくれる店を選び、短期間で消費できる量を購入するのが最良となります。
大量の豆を買ったときは、豆のままの状態で1~2週間程度の消費量を、気密容器に小分けして冷凍保存し、消費中の容器は冷蔵庫に保管し、できれば室温に戻してから淹れる直前に粉砕する。
と、書いてはみましたが、自分で自宅においてであればここまでの手間は掛けられないと思います、あくまでも理想としてですから・・・・・
上の写真は当店の保存法と包装の紹介、左から。
冷凍(-18~-20℃)保存状態の瓶
冷蔵(10℃前後)保存状態の瓶
包装容器 低透湿、高ガスバリア、アルミ蒸着フィルムを含む4層構造、高機能ワンウエイバルブを装着、最高レベルの包材です。
科学的根拠に基ずく知識が得られると思います。
感性だけに頼らない珈琲論として、手に入れやすい良書です。
タグ:ガスバリア性
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