読んだ本 #8 糖尿なのに脂質(あぶら)が主因 ビタミンK2 作用の阻害を介して水添大豆油もカノーラ菜種油と他の数種の植物油も、多様な有害作用を示す。 [読書]
主題が生活習慣病ですから長いスパンで観て、方針と結果との乖離を検証して、ずれて居るところや明らかに間違いだと思われるところを洗い出し、脂質栄養の面から解を求めてみたところ、植物性油脂の微量成分とビタミンK2の関係が糖尿病とその合併症の主たる原因であることが解った、糖が主役ではなかったとの結論を得たということでした。糖を主役とする対処では発症を抑えられていない、逆に状況を悪化させるものさえある、結果を精査すれば根本的な錯誤を疑わざるを得ない、となるのだと思います。
本書の内容がなじみにくいと感じられるのは、糖尿病に関する現在の理解・対処・処方の多くを否定しているからです。天動説地動説のように、原因は油ですいや糖ですと神学論争か宗教戦争のごとき展開が生じます、そこに解明しえない人体の複雑さが基として在るからだと思います。
ガリレオはローマカソリックの宗教裁判により異端の判決を受け、地動説を放棄することを誓い、その後ほぼ軟禁監視付きの生涯を送りました。
時の権力・主流派・常識に逆らい異説を唱えることは大変なリスクを伴います。食用油脂における主流派の主張が利益相反を包摂するものとの学説は、反動造反分子として粛清排除されるでしょう。
家畜飼料の残渣物としての植物油を、人体のエネルギー源として有効かつ安全に活用できるのであれば誠に喜ばしいことと思います。
国策としての肉卵乳の合理的で安定した供給、輸出品目のバーターとしてのヤシ油の輸入、それらの結果として植物油を口に入れざるを得ない国民。
現在大量に消費されている植物油の多くに、糖尿病とその合併症の主要な原因因子が認められる、もしあなたが科学者でそのことを確信したとき、そのことを告発啓蒙してゆけるでしょうか。
省庁の記者クラブに入る大手マスコミは積極的に取り上げるでしょうか、植物油脂関連広告で潤う媒体を持つ組織はどう対応するでしょう。政治家個人として問題意識があったとしても、籍を置く党が業界の恩恵に預かっていれば圧力を感じると思います。官僚官職者は早すぎる肩たたきの後の人生を観てくれる業界等には、当然配慮があると思います。科学者の頭目とて仙人ではありません、弟子を食わせねばなりません、研究費も工面せねばなりません、応援してくれる企業業界行政政治学会のご機嫌は損ねたくないでしょう。我々一般人は権威肩書の有る科学者学会が大手マスコミを通じ、安全安心有益ですと繰り返し太鼓判を押せば疑う由もありません。
切迫感悲嘆切望の背景が解る気がします。利益相反を排除との当委員会の宣言、”栄養学医療の成功にとっては、関係への配慮よりも、真実を優先すべきである。なぜなら自然を騙すことはできないからだ” とする姿勢、今までの予防治療の結果を冷徹に分析批評出来るポジションの確保。本書の真理を信じたく思います。
以下本書P112「産業界、行政の思惑」の項を引用します。
水添植物油の代替え油脂としては、トランス脂肪酸を含まないパーム油が水添植物油より安価に入手できますので、産業界としてはすでに問題は解決していることになります。実際パーム油が植物油脂という原材料名で、私たちの食環境にひそかに、そして大量に侵入しています。その結果、日本人のトランス脂肪酸摂取量は0.7エネルギー%から0.3エネルギー%まで下がってきたと強調されています。遠からず、無視できる程度に下がるでしょう。
しかし、「ビタミンK2 作用の阻害を介して水添大豆油もカノーラ菜種油と他の数種の植物油も、多様な有害作用を示す」ということになれば、菜種油や水添大豆油のほか、同じように脳卒中促進作用を持つコーン油、オリーブ油など他の主要植物油に飛び火します。そして代替え油のパーム油も安全ではなく、多くの有害作用が報告されています。
世界の産業界とその御用学者は他の油脂に飛び火することを恐れて、水添油脂の有害性を「工業トランス脂肪によるLDH/HDLの上昇」の問題に限定しようとしているようです。水添植物油とカノーラ植物油の有害作用については多くの論文が発表されているにもかかわらず、彼らはまったくそれについて言及しようとしません。消費者が賢くならないと、植物油脂の環境ホルモン作用により日本の人口減少に歯止めがかからないかもしれません。
以上引用終了
この記事の最初#1はこちら。
糖尿なのに脂質(あぶら)が主因 「糖尿病とその合併症予防の脂質栄養ガイドライン」 日本脂質栄養学会 糖尿病・生活習慣病予防委員会/著
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